キネマ旬報ベスト・テン(キネジュンベスト10)は、映画雑誌「キネマ旬報」が主催。 日本で最も信頼性が高く、権威のある映画賞である。 1924年にスタートした。 米アカデミー賞よりも古い歴史を持つ。 戦争中3年間の中断を除き毎年開催されている。
第3回(1926年)から現在のスタイルでもある日本映画(邦画)と外国映画の2部門で行われている。 外国映画はかつては「洋画」と呼んでいた。
選考方法も当初は読者投票で行われていたが、戦後、編集部が選んだ選考委員による審査へと形を変えた。選考委員は映画評論家や映画担当の記者らで構成される。 (ただし、現在も読者投票は続いており、別枠の部門として表彰される)。 選考委員の数がたいへん多い。最初14人だったのが2006年は71人にまで増加。その後さらに増えて100人を超えたこともある。 大人数で選考することで客観性が強まる。
点数方式(1位10点、2位9点…)で選出するのが特徴的。各選考委員の投票をすべて誌面上で公開する。 「選考上で一切の操作がないという意味を込めて公開している。公開することで投票にも責任感が生まれる」という考えに基づいている。 こうした透明性の高さによって、役者、業界、読者から信頼を勝ち取ってきた。 それが90年以上も続いている要因だ。
それに比べて、日本アカデミー賞は、 東映や東宝という大手映画会社の社員(サラリーマン)が多数の投票権を握っており、 東映や東宝に有利になりやすい。 たいへん信頼性が低い。 (アワード・ウォッチ編集部)
歴代の一覧(全部門)
2023年キネ旬ベスト(2024年発表) | |
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部門 | 受賞者 |
作品賞 (ベストテン1位) |
「せかいのおきく」
<2位以下> 2位:「パーフェクト・デイズ」 3位:「ほかげ」 4位:「福田村事件」 5位:「月」 6位:「花腐し」 7位:「怪物」 8位:「ゴジラ-1.0」 9位:「君たちはどう生きるか」 10位:「春画先生」 ※歴代の作品賞▼ |
主演男優賞 |
役所広司
「パーフェクト・デイズ」 <2位以下> 2位:鈴木良平 3位(同点で2人) 内野聖陽(せいよう) 松山ケンイチ 5位(同点で3人) 綾野剛 池松壮亮 光石研(みついし・けん) ※歴代の主演男優賞→ |
主演女優賞 |
趣里(しゅり)
「ほかげ」 <2位以下> 2位:杉咲花 3位(同点で2人) 菊地凛子 黒木華 5位:真木よう子 ※歴代の主演女優賞→ |
助演男優賞 |
磯村勇斗(はやと)
「月」「正欲」ほか <2位以下> 2位:宇崎竜童 3位:水道橋博士 4位(同点で7人) 柄本明 大泉洋 寛一郎 佐藤浩市 永山瑛太 三浦貴大 リリー・フランキー ※歴代の助演男優賞→ |
助演女優賞 |
二階堂ふみ
「月」 <2位以下> 2位:阿川佐和子 3位(同点で3人) 黒木華 さとうなほみ 趣里 ※歴代の助演女優賞→ |
監督賞 |
ビム・ベンダース
「パーフェクト・デイズ」 |
読者選出 日本映画1位 |
「Gメン」
<2位以下> 2位:「福田村事件」 3位:「怪物」 4位:「ゴジラ-1.0」 5位:「月」 6位:「正欲」 7位:「愛にイナズマ」 8位:「君たちはどう生きるか」 9位:「市子」 10位:「BAD LANDS(バッド・ランズ)」 |
読者選出 日本映画監督賞 |
瑠東東一郎(るとう・とういちろう)
「Gメン」 |
脚本賞 |
「せかいのおきく」
阪本順治 |
新人男優賞 |
塚尾桜雅(おうが)
「ほかげ」 <2位以下> 2位:柊木陽太(ひいらぎ・ひなた) 3位(同点で2人) アフロ 黒川想矢(そうや) 5位:池川侑希弥(ゆきや) |
新人女優賞 |
アイナ・ジ・エンド
「キリエのうた」 <2位以下> 2位:山﨑七海 3位:花瀬琴音 4位(同点で3人) 呉城(くれしろ)久美 サリngROCK(サリングロック) 當真(とうま)あみ |
文化映画1位 |
「キャメラを持った男たち 関東大震災を撮る」
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外国映画1位 |
「TAR(ター)」
<2位以下> 2位:「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」 3位:「枯れ葉」 4位:「EO イーオー」 5位:「フェイブルマンズ」 6位:「イニシェリン島の精霊」 7位:「別れる決心」 8位:「エンパイア・オブ・ライト」 9位:「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」 10位:「ウーマン・トーキング 私たちの選択」 |
読者選出 外国映画1位 |
「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
<2位以下> 2位:「TAR(ター)」 3位:「フェイブルマンズ」 4位:「ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE」 5位:「イニシェリン島の精霊」 6位:「枯れ葉」 7位:「バービー」 8位:「エンパイア・オブ・ライト」 9位:「トリとロキタ」 10位:「ザ・ホエール」 |
外国映画監督賞 |
トッド・フィールド 「TAR(ター)」 |
部門 | 受賞者 |
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作品賞 (ベストテン1位) |
「ケイコ 目を澄(す)ませて」
監督:三宅唱(しょう) ※耳の聞こえない女性ボクサーの挑戦と葛藤、そして周囲との触れ合いを追う日常生活劇。実在のボクサーの自伝が原案になっている。 派手な展開や過剰演出に頼ることなく、登場人物たちと誠実に向き合い、観客に生きる勇気を与える。 16ミリフィルム撮影による素朴で人間味漂うショットの連続と、静寂シーンの中で響く数々の「音」により、唯一無二の没入型シネマとなった。まさに研ぎ澄まされた日本的「引き算の美学」の好例。 海外でも高い評価を受け、世界中の映画祭から引っ張りだこになった。 【他の受賞歴】 ・毎日映画コンクール【5冠】作品賞、監督賞、主演女優賞(岸井ゆきの)、撮影賞、録音賞 ・高崎映画祭 作品賞&主演女優賞(岸井ゆきの) ・雑誌「映画芸術」年間ベスト1位 ・ベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門ノミネート ・スペイン バレンシア国際映画祭ノミネート ・ベルギー ヘント国際映画祭ノミネート <作品賞ベスト2位以下> 2位:「ある男」 3位:「夜明けまでバス停で」 4位:「こちらあみ子」 5位:「冬薔薇(そうび)」 6位(同点で3本) 「PLAN 75」 「土を喰らう12ヵ月 」 「ハケンアニメ」 9位(同点で2本) 「さがす」 「千夜、一夜 」 ※歴代の作品賞▼ |
主演男優賞 |
沢田研二
「土を喰らう十二ヵ月」 (配給:日活) 【他の映画賞】 ・毎日映画コンクール <2位以下> 2位:妻夫木(つまぶき)聡 3位(同点で5人) 稲垣吾郎 松坂桃李 豊川悦司 渡辺紘文 窪田正孝 ※歴代の主演男優賞→ |
主演女優賞 |
岸井ゆきの
「ケイコ 目を澄ませて」 (配給:ハピネットファントム) ※聾(ろう)者のボクサー役。発声による台詞ではなく、顏・体(アクション)・手話による演技。 とりわけ「眼」による表現の豊かさが、大絶賛を浴びた。 役作りのためにボクシングの特訓を重ね、リズミカルでキレのある身のこなしと、リングでの野獣のような闘いぶりを実現。 他の登場人物や風景との溶け込み具合も見事だった。同じく本年公開だった「神は見返りを求める」との対照的な役柄で、幅の広さも見せた。 製作の初期段階から参加し、成功に尽力した。 本年度の邦画界は主演女優による名演が数多く見られたが、その中でも突出していた。 【他の対象作品】 「神は見返りを求める」 「犬も食わねどチャーリーは笑う」 「やがて海へと届く」 【他の映画賞】 ・毎日映画コンクール 主演女優賞 ・高崎映画祭 主演女優賞 <2位以下> 2位:倍賞千恵子 3位:田中裕子 4位:安藤サクラ ※歴代の主演女優賞→ |
助演男優賞 |
三浦友和
「ケイコ 目を澄ませて」 (配給:ハピネットファントム) ※廃業寸前のボクシングジムの会長を演じた。人としての奥行きや年輪を感じさせるベテランならではの好演。言葉は少ないが、背中だけで語る存在感は見事。とくに岸井ゆきの演じる女性ボクサーとの練習のシーンは、多くの観客の称賛の的になった。 【他の対象作品】 「線は、僕を描く」 「グッバイ・クルエル・ワールド」 <2位以下> 2位:窪田正孝 3位(同点で4人) 中島歩 横浜流星 ダンカン 柄本明 ※歴代の助演男優賞→ |
助演女優賞 |
広末涼子
「あちらにいる鬼」 (配給:ハピネットファントム) 【他の対象作品】 「バスカヴィル家の犬 シャーロック」 「コンフィデンスマンJP 英雄編」 <2位以下> 2位(同点で2人) 伊東蒼 余貴美子 4位(同点で3人) 河合優実 大西礼芳 尾野真千子 ※歴代の助演女優賞→ |
監督賞 |
高橋伴明(ばんめい)
「夜明けまでバス停で」 (配給:渋谷プロダクション) |
読者選出 日本映画1位 |
「ケイコ 目を澄ませて」
(配給:ハピネットファントム) |
読者選出 日本映画監督賞 |
三宅唱(しょう)
「ケイコ 目を澄ませて」 (配給:ハピネットファントム) |
脚本賞 |
「夜明けまでバス停で」
梶原阿貴(あき) |
新人男優賞 |
目黒蓮
「月の満ち欠け」 (配給:松竹) 「おそ松さん」 (配給:東宝) <2位以下> 2位:水上恒司(岡田健史) 3位:カン・ユンス 4位(同点で2人) 坂元愛登(まなと) 諏訪珠理(すわ・しゅり) |
新人女優賞 |
嵐莉菜(あらし・りな)
「マイスモールランド」 (配給:バンダイナムコアーツ) <2位以下> 2位:大沢一菜(かな) 3位:上大迫祐希(かみおおさこ・ゆうき) 4位(同点で2人) Koki(コウキ) さとうほなみ |
文化映画1位 |
「私のはなし 部落のはなし」
監督:満若勇咲(みつわか・ゆうさく) |
外国映画1位 |
「リコリス・ピザ」
国内配給:ビターズ・エンド、パルコ |
読者選出 外国映画1位 |
「コーダ あいのうた」
監督:シアン・ヘダー 国内配給:ギャガ |
外国映画監督賞 |
ペドロ・アルモドバル 「パラレル・マザーズ」 国内配給:キノフィルム |
部門 | 受賞者 |
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作品賞 (ベストテン1位) |
「ドライブ・マイ・カー」
(監督:濱口竜介)
予告編→ |
監督賞 | 濱口竜介 「ドライブ・マイ・カー」 「偶然と想像」 |
主演男優賞 | 役所広司 「すばらしき世界」 ※歴代の主演男優賞→ |
主演女優賞 | 尾野真千子 「茜(あかね)色に焼かれる」 「ヤクザと家族 The Family」 ※歴代の主演女優賞→ |
助演男優賞 | 鈴木亮平 「孤狼の血 LEVEL2」 「燃えよ剣」 「土竜の唄 FINAL」 ※歴代の助演男優賞→ |
助演女優賞 | 三浦透子(とうこ) 「ドライブ・マイ・カー」 「スパゲティコード・ラブ」 ※歴代の助演女優賞→ |
新人男優賞 | 和田庵(いおり) 「茜(あかね)色に焼かれる」 |
新人女優賞 | 河合優実(ゆうみ) 「由宇子の天秤(てんびん)」 「サマーフィルムにのって」 「偽りのないhappy end」 |
脚本賞 | 濱口竜介、大江崇允(たかまさ) 「ドライブ・マイ・カー」 |
文化映画1位 |
「水俣曼荼羅(まんだら)」
(監督:原一男) |
外国映画1位 | 「ノマドランド」 |
外国映画監督賞 | クロエ・ジャオ 「ノマドランド」 「エターナルズ」 |
読者選出 日本映画1位 |
「ドライブ・マイ・カー」 |
読者選出 外国映画1位 |
「ノマドランド」 |
読者選出 日本映画監督賞 |
濱口竜介 「ドライブ・マイ・カー」 |
読者選出 外国映画監督賞 |
クロエ・ジャオ 「ノマドランド」 |
部門 | 受賞者 |
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作品賞 (ベストテン1位) |
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監督賞 | 大林宣彦 「海辺の映画館―キネマの玉手箱」(アスミック) |
主演男優賞 | 森山未來 「アンダードッグ」(東映ビデオ) |
主演女優賞 | 水川あさみ 「喜劇 愛妻物語」(バンナム、キューテック) 予告編→ Amazon配信→ 「滑走路」 |
助演男優賞 | 宇野祥平 「罪の声」(東宝) 「本気のしるし 劇場版」 「恋するけだもの」 「37セカンズ」 「星の子」 |
助演女優賞 | 蒔田彩珠 「朝が来る」(キノ) Amazon配信→ |
新人男優賞 | 奥平大兼 「MOTHER マザー」 |
新人女優賞 | モトーラ世理奈 「風の電話」(ブロードメディア) 「タイトル、拒絶」 |
脚本賞 | 濱口竜介、野原位(ただし)、黒沢清 「スパイの妻」 Amazon配信→ |
文化映画1位 | 「なぜ君は総理大臣になれないのか」 |
外国映画1位 | 「パラサイト 半地下の家族」 |
外国映画監督賞 | ポン・ジュノ 「パラサイト 半地下の家族」 |
読者選出 日本映画1位 |
「天外者(てんがらもん)」 |
読者選出 日本映画監督賞 |
田中光敏 「天外者」 |
読者選出 外国映画1位 |
「パラサイト 半地下の家族」 |
読者選出 外国映画監督賞 |
ポン・ジュノ 「パラサイト 半地下の家族」 |
2019年(2020年2月発表)のキネマ旬報ベストテン(キネジュンベスト10)は、 「火口のふたり」の日本映画部門の1位(作品賞)を受賞しました。 「半世界」が読者投票の日本映画1位に選ばれました。 半世界は助演女優賞と脚本賞も獲得しました。 「宮本から君へ」が主演男優賞に輝きました。
部門 | 受賞 |
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作品賞 (ベストテン1位) |
「火口のふたり」(かこうのふたり)
(監督:荒井晴彦、配給:ファントム・フィルム) 予告編→ Amazon(ブルーレイ)→ |
監督賞 | 白石和彌 「ひとよ」「凪待ち」「麻雀放浪記2020」 |
主演男優賞 |
池松壮亮 「宮本から君へ」 |
主演女優賞 |
瀧内公美 「火口のふたり」 |
助演男優賞 |
成田凌 「愛がなんだ」「さよならくちびる」 ほか |
助演女優賞 |
池脇千鶴 「半世界」 |
脚本賞 |
阪本順治 「半世界」 |
外国映画賞 |
「ジョーカー」 (日本公開:2019年10月) 予告編→ 字幕版(Amazon)→ 吹替版(Amazon)→ |
新人男優賞 |
鈴鹿央士 「蜜蜂と遠雷」「決算!忠臣蔵」 |
新人女優賞 |
関水渚 「町田くんの世界」 |
読者賞(日本映画) |
「半世界」
予告編→ Amazonビデオ→ (配給:キノフィルムズ) |
読者賞(外国映画) | 「ジョーカー」 |
部門 | 受賞者 |
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作品賞 (ベストテン1位) |
「万引き家族」
(配給:ギャガ) 予告編→ 動画配信(Amazon)→ |
監督賞 | 是枝裕和 「万引き家族」(ギャガ) |
主演男優賞 | 柄本佑 「きみの鳥はうたえる」、「素敵なダイナマイトスキャンダル」、「ポルトの恋人たち 時の記憶」 |
主演女優賞 | 安藤サクラ 「万引き家族」(ギャガ) |
助演男優賞 | 松坂桃李 「孤狼の血」 |
助演女優賞 | 木野花 「愛しのアイリーン」 |
新人男優賞 | 寛一郎 「菊とギロチン」 |
新人女優賞 | 木竜麻生 「菊とギロチン」、「鈴木家の嘘」 |
脚本賞 | 相澤虎之助/瀬々敬久 「菊とギロチン」 |
文化映画1位 | 「沖縄スパイ戦史」 |
読者選出日本映画1位 |
「万引き家族」
(ギャガ) 予告編→ 動画配信(Amazon)→ |
読者選出日本映画監督賞 | 是枝裕和 「万引き家族」(ギャガ) |
外国映画1位 | 「スリー・ビルボード」 |
外国映画監督賞 | マーティン・マクドナー 「スリー・ビルボード」 |
読者選出外国映画1位 | 「スリー・ビルボード」 |
読者選出外国映画監督賞 | マーティン・マクドナー 「スリー・ビルボード」 |